定位的血腫吸引除去術
内視鏡下血腫除去術が行われるようになったことで、この手術を行うことは減ってきました。脳への負担はかなり少ない手術ですが、脳出血を起こした時にすぐにできないのが大きな欠点です。脳出血を起こしてすぐは血液はゼリー状ですが、1日から数日経つと、だんだん溶けて液状になってきます。そのタイミングで、細めの針を差し込んで血液を抜く手術です。
局所麻酔でもできる手術です。皮膚を切るのは4cm程度ですので、そこに局所麻酔を注射します。皮膚を切ると、すぐ下に骨が出てくるため、直径1cmくらいの穴を開けます。骨の下の硬膜にも穴を開けると、脳の表面が見えます。ここから、CTなどの検査結果を元に血腫の方向を確認し、太さ3~4mmの針を差し込みます。そこから注射器で血液を吸い取ります。吸い取れるだけ吸い取ったら、同じ場所に管を置いておき、その管は皮膚のわきの部分から外に出して固定しておきます。最後に皮膚を縫い合わせて手術を終了します。
液状の血液しか吸い取れませんので、硬めの血液は残っています。そこで、術後に、置いておいた管から血液を溶かす薬を入れ、しばらく経ってからまた吸い取るということを繰り返します。十分血液が減ったら管を抜きますが、管を抜くのはベッドサイドで簡単にできます。
この手術の大きな欠点は、実際に脳の中にある血液を見ながら取っているわけではないため、もし手術中に再出血を起こしても血を止めることができません。それどころか、再出血していることに気づくことすらできません。脳出血を起こしてすぐの血管はとても不安定で再出血しやすいため、最低でも発症から24時間以上は空けて、ある程度安定してから手術をしないと危険です。また先に述べたように、血液が液状になってからの手術ですので、その点からも発症から時間を空ける必要があります。
あと、実際に血液を見ながら取っているわけではないので、最終的な血腫除去率(どれくらいの血液が取り除けるか)も低くなってしまうことが多いです。