脳の病気 脳の手術

脳の病気、脳の手術について分かりやすく解説します。自分の言葉で書きますので、間違った表現、間違った内容が含まれる可能性もあります。情報の取り扱いには十分ご注意下さい。

記事は順次追加していき、Twitterでもお知らせしますのでフォローをお願いします。脳の病気は、術後も長期的に経過を見る必要があるため、近くで信頼できる医師を見つけるのが良いと思います。愛知県東部の方は、直接相談にも乗れますので、必要な方はご連絡下さい。


質問箱(脳神経外科医@愛知県)

開頭血腫除去術

大きく頭の骨を開いて、血液を取り除く手術です。命に関わる状況で、救命目的で行うことが多いです。通常の脳出血は細い血管からの出血ですので、血管の検査では異常を認めませんが、もし検査で血管の異常を認める(あるいは疑われる)場合は、手術中に大出血を起こす危険もあるため、しっかり止血操作のできるこの手術を選択します。

出血の場所によって、開頭する部位が違いますし、それによって皮膚を切る位置も変わってきます。脳の一部を切開して血腫(出た血液の塊)に到達しますので、血腫が表面から最も近い部位から入るのが理想的です。
開頭する部位を半周程度囲むように皮膚を切開してめくります。その下に筋肉がある場合はそちらも切開します。そうすると骨が出てきますので、3~4ヶ所、1cmくらいの穴を開け、それをつなぐようにドリルで切って、骨をはずします。数cmから10cm程度の開頭が一般的ですが、出血が大きくて状態が悪い場合は、それ以上の大きな開頭を行うこともあります。
頭蓋骨の内側には硬膜という膜がありますので、その膜も切ると、脳の表面が出てきます。その脳表の一部に切開を加えたり、時には正常脳の一部を少しよけて、最も血腫に近い部分に到達し、そこの脳に切開を加えたりして、血腫まで到達します。血液は、大半はゼリー状であり、吸引管(きゅういんかん)で吸い取ることができます。出血の元となる血管が出てきた場合、そこからまた血が出ることもありますが、血を止める道具を使えば、しっかり止めれることがほとんどです。
最後に、硬膜を縫い合わせ、骨を金属製のプレートとネジで固定し、皮膚を縫い合わせて手術を終えます。

手術のトラブルで最も重要なのが、出血です。先に述べたように、術中に見えているところで出血した場合は止めることができますが、陰に隠れて見えないところから出血している場合は、止血が不十分になることもあります。また、手術中は止まっていても、手術後にまた血が出だすこともあり得ます。通常は出血の元となっている血管はとても細い血管ですが、脳動静脈奇形(AVM)や動脈瘤といった太い血管の異常がある場合は、手術中に大出血を起こすことがあります。できる限り、術前の検査で、こういう血管の異常があるかないか確認しておきますが、緊急手術ですので、十分な検査ができず、手術中に初めて気づくこともあります。