脳の病気 脳の手術

脳の病気、脳の手術について分かりやすく解説します。自分の言葉で書きますので、間違った表現、間違った内容が含まれる可能性もあります。情報の取り扱いには十分ご注意下さい。

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質問箱(脳神経外科医@愛知県)

経鼻手術の方法

鼻の奥には、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)と呼ばれる骨の空洞があります。さらにその奥に、トルコ鞍(とるこあん)と呼ばれる下垂体の入っている骨のポケットがあります。この経路で手術を行いますので、経鼻経蝶形骨洞法とも呼ばれます。

この手術も、全身麻酔は必要です。最近は内視鏡を使って手術することがほとんどです。
まず鼻の粘膜を切って粘膜をはがし、鼻の奥のつきあたりにある蝶形骨洞の手前側の骨に到達します。ここの骨を取り除いて、蝶形骨洞の中に入ります。その奥には、トルコ鞍の骨がありますので、そこの骨にも穴を開けると、硬膜(こうまく)という膜が出てきます。硬膜を切ると、腫瘍あるいは正常の下垂体が出てきます。
腫瘍はとても柔らかいことが多く、ある程度は掻き出したり吸い取って取り除くことができます。周りの組織(主に視神経)への圧迫を取るだけであれば、この操作だけでも十分ですが、ホルモンを作っているタイプの下垂体腺腫では、ホルモンの数値をしっかり下げる必要があるため、すみずみまで腫瘍を取り除かなければなりません。腫瘍の周りには、被膜(ひまく)という薄い膜が覆っていますので、この膜を残して腫瘍の中身だけを取り除けば、周りの組織を傷つける心配がないため、安全性は上がります。しかし、ホルモンを下げるためには、この被膜も取らなくてはいけませんので、その分、周りの組織を傷つける危険は上がります。
腫瘍の摘出が終わり、そこに大きな空洞ができた場合、下腹部などから脂肪の一部を取ってきて、その空洞の中に埋めておきます。視神経などの上方の組織が急激に落ち込んでくることを防ぐためです。つめた脂肪はゆっくり時間をかけて吸収されていきます。
最後に、切った硬膜や骨の穴を、さまざまな物(これは術者の考え方で、色んなものが使われます)で覆い、鼻の粘膜を元の位置に戻して手術を終了します。