脳の病気 脳の手術

脳の病気、脳の手術について分かりやすく解説します。自分の言葉で書きますので、間違った表現、間違った内容が含まれる可能性もあります。情報の取り扱いには十分ご注意下さい。

記事は順次追加していき、Twitterでもお知らせしますのでフォローをお願いします。脳の病気は、術後も長期的に経過を見る必要があるため、近くで信頼できる医師を見つけるのが良いと思います。愛知県東部の方は、直接相談にも乗れますので、必要な方はご連絡下さい。


質問箱(脳神経外科医@愛知県)

聴神経腫瘍に対する手術治療について

聴神経腫瘍は良性腫瘍ですので、しっかり摘出できれば、病気をほぼ完全に治すことができます。ただし、顔面神経や脳幹などの大事な部分とがっちりくっついている場合は、それらを傷つけないように少し腫瘍を残すこともあります。それでも、残った腫瘍が少なければ、長期に渡って(うまくいけば一生)追加治療なしで様子を見れることが多いです。

聴力に関しては、術前からすでに聴力が落ちている場合は、いくら手術がうまくいっても、元に戻ることはありません。一方、聴力が残っている場合は、これを悪化させないために手術を選択することもあります。治療を行わずに経過観察したり、放射線治療を行った場合は、いずれ聴力は落ちてきますので、聴力を残す唯一の方法が手術ということになります。ただし、聴神経から腫瘍のみをはがし取るのはかなり細かな技術が必要で、結局術後に聴力を失ってしまうこともあります。また、聴力が残せても、耳鳴りがしたり、変に響いてしまったりして聞き取りにくくなり、むしろ邪魔になってしまうこともあります。

一方、顔面神経の機能は絶対に残す必要があり、これがこの手術の最大のポイントになります。術後に顔面麻痺が出てしまうと、片側の顔が曲がってしまうという見た目の問題だけでなく、片目が閉じなくなってしまうため、目が乾燥しやすく、目薬が手放せなくなります。また、口元もゆるんでしまうため、食べ物や飲み物がこぼれてしまって食べにくくなったりします。腫瘍がある程度の大きさになると、顔面神経ともがっちりくっついてしまいますので、これを慎重にはがしていかなければなりません。顔面神経は手術操作に対してはとても弱い神経ですので、最も気を使う操作になります。場合によっては、顔面神経とくっついてる部分の腫瘍は少し残し、顔面神経を傷つけないように守ることもあります。